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LGBT理解増進法案に対する声明文を岸田文雄内閣総理大臣に送りました。

2023.03.01   お知らせ 

下記の通り、LGBT理解増進法案に対する声明文を岸田文雄内閣総理大臣に送りました。

内閣総理大臣 岸田文雄様
LGBT
に関する課題を考える議員連盟様

声明:LGBT理解増進法案の決議は時期尚早です

現在、国会でLGBT法案(LGBT理解増進法案)の審議が行われています。岸田政権はG7広島サミット(5月19日~21日)までに法案を通そうと急いでいると言われており、LGBT議連(超党派)は実際にサミットまでに法案成立を目指すと明言しています。

LGBT法案を推進する活動家は、先進国でLGBTの権利保障がないのは日本だけと主張し、岸田政権が法案の成立を急ぐのもそのためであると言われます。しかし、米国を初めとする先進国の状況を見ると、そのような単純な図式が当てはまらないことがわかります。LGBT法案についてはいくつか深刻な問題がありますが、ここではLGBTの「T」にあたるトランスジェンダーの問題を中心に、マスメディアでは取り上げられることが少ない各国の状況を紹介します。LGBT法案を考える上で一つの視点としていただければ幸いです。

米国の状況

連邦レベルではLGBT法案は不成立に終わっている

米国の連邦議会では、「Equality Act(平等法)」というLGBTの権利保護に関する法案が、2019年と2021年に提出されています。ただ、この法案は、どちらの年も下院では可決されたものの、上院では否決され廃案となっています。この法案は民主党が推進していますが、共和党が一貫して反対しているためです。昨年(2022年)の中間選挙で、下院で民主党が敗北して共和党が多数派となったため、この法案が近い将来に成立する見込みもありません。

州レベルでは反トランスジェンダー法案が次々と提出されている

LGBT法案は連邦議会では否決されていますが、いくつかの州ではLGBTの権利を保護する法律がすでに成立しています。ただ、ここ12年には逆にLGBT活動家が主張する教育や医療を規制する多数の法案が各州で提出されるようになっています。たとえば、フロリダ州では、低学年の子どもに性的指向や性自認について教えることを禁じ、親の子どもに対する教育権を保護する法案が可決されています。また、また、未成年者に対する性転換治療や手術を禁じる法律や、生物学的には男性であるトランスジェンダーが女性スポーツに参加することを禁じる法律などが成立しています。この傾向は今も続いており、今年(2023年)に入ってからだけでも、さまざまな州で合計120以上の法案が提出されています。

このような法案が提出されるようになった背景には、各州のLGBT法やトランスジェンダー思想の広がりによって、社会問題が頻発していることがあります。そのような問題には、信仰の自由の否定や、女性の権利の侵害、家庭の破壊などがあります。また、性転換治療を受けた子どもたちで、後にそのことを後悔するも、元の体に戻りたくても戻れない方が多数いるという現状があります(この点は後述)。

ヨーロッパ諸国の状況

ヨーロッパでも、トランスジェンダー関連の政策の見直しが始まっています。

英国では性別違和の診断と治療を行う唯一の専門病棟が閉鎖

英国には、タビストック・クリニック(Tavistock Clinic)という病院がロンドンにあります。このクリニックには、性別違和(gender dysphoria。性同一障害とも訳される)に関する診断と治療を行う国内で唯一の専門病棟がありました。しかし、このクリニックで行われていた治療に対する問題が明るみになり、第三者機関の調査報告を受けて2022年に閉鎖が決定されました。この報告では、次のような問題が指摘されていました。

  • 医療スタッフは「(患者の性自認に)疑問を抱かず肯定するアプローチ」を採るようにという圧力を感じて勤務していた。
  • 患者が性別に関する苦痛を感じている場合、発達障害など他の問題を抱えていても見落とされることがあった。

北欧では性別違和に関する医療の見直しが始まっている

北欧は、一般にLGBTの理解に関して「進んでいる」と見られています。そのような北欧の国、スウェーデンとフィンランドでも、これまで行ってきた性別違和に対する治療方針の見直しが始まっています。スウェーデンのガイドラインでは、「性転換治療のリスクは便益を上回っており、この治療は例外的な場合にのみ提供されるべきである」としています。また、フィンランドのガイドラインでは、性転換治療は「慎重に行う必要があり、不可逆的な治療は始めてはならない」と定めています。いずれのガイドラインも、本人の性自認を無批判に受け入れて性転換治療を行うのではなく、まずは精神疾患の治療など、他の方法を探るべきだとしています。

こうした判断に至った根拠として、スウェーデンのガイドラインは「性転換治療の有効性と安全性に関する信頼できる科学的根拠が欠けていること」と、若年成人の間で「ディトランジション」が起こっているという新たな知見が得られたことを挙げています。この「ディトランジション」は、トランスジェンダー問題を考える上で欠かせない視点です。

「ディトランジション」する元トランスジェンダーたち

「ディトランジション」とは、性転換治療や手術を受けたトランスジェンダーが元の性別に戻ることを意味します。英国では、性転換治療を受けた患者の10%がディトランジションすると報告されています。また、ディトランジションした人で、担当医師に報告した人は24%しかいなかったという調査報告もありますので、実際にはそれ以上の数字であることが予想されます。

このディトランジションを行った元トランスジェンターに、米国のウォルト・ヘイヤー氏がいます。ヘイヤー氏は、「Sex Change Regret(性転換を後悔するという意味)」という団体を立ち上げ、 性転換手術を受けたことを後悔して悩みを抱えている世界中の人々を支援しています(ヘイヤー氏のインタビュー動画はこちら)。ヘイヤー氏は、性転換手術は「史上最大の医療詐欺」とし、「トランスジェンダーは存在しない」とも語っています。

トランスジェンダーに対する理解を深めるには、ヘイヤー氏のように、トランスジェンダーとして生きると決意したにもかかわらず、ディトランジションをするに至った方の体験談にも耳を傾ける必要があります。先述の英国タビストック・クリニックの性別違和診療に関して調査を行った第三者機関の報告では、「性的違和に関してはコンセンサスと自由な議論が欠けており、そのために適切な医療対応についてもコンセンサスと自由な議論が欠けている」と言われています。つまり、性同一性障害(性的違和)は、医学的にコンセンサスがある確立した概念ではなく、治療法も確立していないということです。

性転換治療や手術を受けた子どもたちが、その後に後悔して病院や医師を訴えるという事例が起きている今、トランスジェンダーの権利保護を推進する活動家の説明を鵜呑みにして立法化する前に、トランスジェンダーとは何かという問題について十分に議論する必要があります。

まとめ

LGBTに関する先進国の対応状況を見ると、LGBTの主張を支持する点で一致しているわけではなく、特にトランスジェンダー思想に対しては懐疑的な見方が広がっています。トランスジェンダーに関しては、性転換治療を受け、元の体に戻りたくても戻れない子どもたちの被害が明らかになっています。LGBT法案の成立は、欧米で起こっているさまざまな社会問題を日本でも繰り返すことになりかねません。また、LGBTに関する議論には、このような各国の状況とあわせて、数千年の歴史にわたって人類を導いてきた聖書の視点が必要だと考えます。

新約聖書のマタイ1945では、次のように言われています。

イエスは答えられた。「あなたがたは読んだことがないのですか。創造者ははじめの時から『男と女に彼らを創造され』ました。 
そして、『それゆえ、男は父と母を離れ、その妻と結ばれ、ふたりは一体となるのである』と言われました。 

これはイエス・キリストが創世記127224に言及している箇所ですが、男女と結婚に関する創造の秩序が語られています。聖書は、神は人を男と女に造られたと語っています。つまり、第三の性はありません。また、結婚は男女間のものであると定めています。つまり、同性婚は聖書が定める結婚ではありません。この教えは、一部の人には自由な生き方を縛るものと映るかもしれません。しかし、人類は何千年間にもわたって、この原則に立って社会を営んできたのではないですか。この原則から外れようとしている現代は、長い人類の歴史から見ると基準を逸脱した時代です。物理法則を無視して行動すればその結果が自分に返ってくるのと同様、創造の秩序を無視して生きれば結果的に自分自身を苦しめることになります。

LGBT法案は、以上の点を考慮し、今国会で早急に結論を出すのではなく、国民が法案の持つ意味を十分理解するまで議論を重ねる必要があると考えます。

2023年3月1
性の聖書的理解ネットワーク(NBUS)呼びかけ人一同